家庭裁判所が親権者を決定する際の判断基準
目次
監護能力(高いほど良い)
監護者に求められる基本的な能力として炊事洗濯等の家事に関する能力が挙げられます。
男性の場合、炊事・洗濯などを日常的にこなしていないことが多いのでこの点が特に不利に働くことが多いようです。
但し、この点を補うため、早く帰宅することのできる職場に転職した(又は”転職が決まっている””転職先を探している”)などの、具体的な行動を伴った「監護の意欲」が見られれば当然印象は良くなるでしょう。
家庭環境(快適な方が良い)
居住環境・教育環境は快適な方が良いです。たとえば、繁華街の近くの家と閑静な住宅街を比べれば、当然閑静な住宅街の方が安全の面でも教育の面でも好ましいと言えます。
また、親の職業・交友関係との関連で、どのような人たちが家に出入りしているかも子供の住環境を考える上では大きく影響してきます。
子どもに対する愛情・育てる意欲(高い方が良い)
子供に対する愛情の強さをはかる客観的な指標はありません。ただ、実務上の観点から言えば「愛情の強さをアピールすること」より「相手方の愛情の薄さをアピール」することの方が、多いと言えます。
そもそも、自分の子供に全く愛情を持ってない親はほとんどいませんから、愛情が強いと主張してもそれはある意味当然のことで、逆に親権者を決定する上では「当然持っているべき愛情が欠落している」という点の方が重大な問題となります。
たとえば、妻の「不倫」は親権者決定の問題とは直接的には関係しませんが、不倫をする過程で「子供をほったらかしにして不倫相手と二人で遊びに出た」などの事情がある場合は、子に対する愛情に疑問を持たれることになるでしょう。
また、不倫相手と二人で遊びに行かないまでも、電話で延々と話し続ける日が続いて子供との時間を一切取らないような場合も同様に、愛情の面で疑いを持たれる可能性が高い考えられます。
経済力(高い方が良い)
子供を育てるためには一定の経済力(資産・収入)が必要です。経済的に豊かな方が子供を監護養育する上で好ましいことは言うまでもありません。
しかし、経済力が高さが決定的な基準になるかどうかというとそうではなく、基本的な生活ができるかどうかというレベルの話です。
たとえば、夫の年収が1億円なのに対し、妻の年収が300万円程度だったとしても、その他の点で妻の方が親権者として適確と認められるのであれば、妻が親権者として指定されることになります。
また、他方の親からの養育費等も考慮に入れた上で生活環境を考えていくことになります。前述の例であれば、年収1億円の夫が負担すべき相当額の養育費も考慮に入れた上で妻は「子供を養っていくことはできる」と主張することができます。
子どもの年齢(低いほど母親が有利)
0~10歳
衣食住に関して面倒をみることが必要なため、母親が親権者になるケースが多いようです。
10~15歳
子どもの発育状況に合わせて、子どもの意思を尊重することもあります。
15~20歳
15歳を過ぎれば自分で判断できる年齢であるとして、裁判所も子どもの意思を尊重します。
20歳以上または20歳未満で結婚したとき
子どもが成人に達していれば、親権の問題は関係ありません。また、20歳未満でも、結婚していれば成人した者とみなされ、その子の親権者の指定は必要ありません。
親族の協力体制(協力者が多いほど良い)
子供を養育監護する上では、協力者は多いほど良いと言えます。特に、責任ある仕事上の立場に置かれやすい夫は、実家の両親等の協力を得なければ、子供の日常家事をサポートできない事情等もあり、これらの事情から親権者の指定を諦めてしまう夫も多いようです。
また、妻の立場から考えてみると、親族等の協力が得にくい上に経済的な不安なども重なって「自分の力ではとても子供を育てられない」と親権者になることを諦めてしまうケースも多々あるようです。
いずれにしても、親族・友人等協力者は多いに越したことはありません。これがあるのとないのとでは親権者になることに前向きになれるかどうか、大きく違ってきますので、離婚時の協力体制に不安がある場合は、予め関係者に離婚した後の協力を求めておきましょう。
子供の意思・従前の監護状況(なついている方が有利)
従前の監護状況を見ていく中で「子供はどちらになついていたか」という点も大きなポイントとなります。例えば、幼少期は母親が直接的に子供の面倒をみる機会が多いこともあり、母親の方になついているケースが多いと言えます。
実際のところ、この点が母親が親権者の指定において母親が圧倒的に有利とされる理由ともいえるわけですが、逆に父親の方が日常的に子供の面倒をみており、子供も父親の方になついているような場合は、当然父親の方が有利といえるでしょう。
但し、子供が生まれて間もない「赤ちゃん」の場合は、前述の「なつく、なつかない」は検討できず、また「授乳は母親しかできない」という事実上の問題から母親の方が圧倒的に有利になります。
健康状態(健康なほど良い)
病気しがちでは、子供の面倒をみる上では大きなマイナスになります。親権者としての適格性を主張していく上では、「病気を隠す」とまではいかなくても「病気は持っているが日常生活には一切支障が無い」という点をキチンと説明できるようにしておいた方がいいでしょう。
男性の親権獲得が難しい実情
親権者決定の実情(親権7)審判や判決の場合、父が親権者になる事は、2~3割程度であり、圧倒的に母親が親権者と指定されることの多いのが実情です。
特に乳幼児~10歳くらいまでは、母親と一緒に生活するのが自然であると考えられ、80%以上は母親が親権者になっています。
親権があるほうが子供を引き取るという決まりはなく、二つの権利(親権・監護権)を分け、後で変更する事もできますが、小さなお子様が居る場合、男性が親権を取得するには非常に不利な状態であると言えます。