面会交流権
目次
- 1 面会交流権とは?
- 2 面会交流権を予め放棄する約束は無効
- 3 面会交流のプラス面とマイナス面
- 4 取り決め方法
- 5 約束より子どもの福祉を優先
- 6 決定から取り消しまでの流れ
- 7 面会交流が認められにくいケース
- 8 養育費を支払わない親の面会交流権
- 9 面会交流の重要性
- 10 ”面会交流”という権利と義務
- 11 面会交流の取り決めは最低限の責任
- 12 面会交流に関して取り決めておくべき事柄
- 13 愛を与える人が多いほど子供は幸せに近づく
- 14 頻度・回数
- 15 面会交流を行う時間
- 16 宿泊の可否
- 17 長期休暇中の長期滞在の可否
- 18 面会交流を行う場所
- 19 面会交流の実施方法を最終的に決定する者、あるいは、決定する方法
- 20 電話・メール・手紙・ネットでのやりとりの可否
- 21 プレゼントの可否
- 22 面会交流の実施する際の送迎や引渡の手順
- 23 学校行事(参観日・運動会等)へ参加の可否
- 24 子どもの意思の確認方法
- 25 非監護親の親族との面会交流の可否
- 26 一度取り決めた面会交流の内容は変更できる?
- 27 子の引き渡しを求める法的手段
- 28 審判・訴訟の前に子供が連れ去られる虞がある場合
面会交流権とは?
面会交流権とは、離婚後、親権者または監護者とならなかった親が、子どもと面接・交渉する(会ったり、手紙を交わしたりする)権利のことをいいます。
法律上、規定する条文はありませんが、親として有する当然の権利として、裁判上も認められています。面会交流の拒否は、子に悪影響を与える特別の事情でもない限りは原則として許されません。
離婚後、親権者や監護者にならなかった親はもちろん、婚姻中だが別居中の親にも、面会交流を求める権利は認められています。
面会交流権を予め放棄する約束は無効
親権者が、非親権者とのその後の接触を断つため、「面会交流権を放棄する」と契約書に記載した場合でも、その合意は無効です。
面会交流権の取り決めをした当初、「中途半端に会うと余計に辛い」と思って面会交流の権利を放棄してしまい、後になって後悔している方もいるかもしれませんが、そのような合意は無効ですので、今後どのような方法で面会交流を実施すべきか、専門家に相談してみましょう。
面会交流のプラス面とマイナス面
面会交流には両親の監護方針に食い違いが大きいと、どちらの親の言うことを聞いたらいいのか、子どもに忠誠心の葛藤や大きな精神的同様が生じます。
また、会うことによって、父母の紛争が再燃すること、それが子どもにも親にも過度の精神的負担や緊張を継続的に強いることなど、マイナス面もあります。
しかし、プラスの面として、同居している親からは得られがたい会話・遊び・相談などの相手をしてもらう現実的利益、たとえば異性の親では相談しにくい話の相談、同居の親とは違う仕事・違う考え方を知るなどがあります。
さらに、別居している親にも自分への関心や愛情があることを知り、別居している親から「見捨てられる」という子どもの不安・孤独感・無力感・喪失感情が和らげられ、子ども自身が自己評価を高め得るという子どもの精神の健全な成長にとって、大切な効果があります。面会交流について決めるときは、これらを総合的に考慮する必要があります。
取り決め方法
面会交流の内容は、両親の協議で決めるのが原則です。協議で決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて話し合いますが、それでもまとまらなければ審判で決定してもらうことになります。
面会交流権の具体的な内容の決め方面会交流権の具体的な内容は大まかに決めても、細かく決めても、あるいは面会交流をすることだけ決めて、あとは「別途協議による」とすることも可能です。
ただ、あらかじめを条件を具体的に決めておかなければ、将来争いのもとになる可能性が高いでしょう。
余計な紛争を防ぐためにも、取り決めをする際には十分な協議を重ね、より具体的な内容について合意し、書面に残しておいてください。
約束より子どもの福祉を優先
面会交流権の内容変更面会交流の方法を決めて実行した結果、子どもが面会交流の日が近づくと体調をおかしくしたり、会うのを泣いて嫌がるようになった場合にも、決めたとおりに面会交流させなければならないのでしょうか。
この場合には、子の福祉の観点から、まず相手方と話し合って、しばらく面会交流をやめて子どもの様子をみるなど、一度決めた面会交流の内容を合意で変更することを交渉すべきです。
面会交流を強行・強要する親話し合いをしようとしても、相手方が「調停や裁判で決まった権利だから決めたとおりにしろ!」と強要したり、「子どものが嫌がっているなんて嘘だ!」と疑ったり、子どもに二度と会えなくなるのではないかとの心配から、どうしても面会交流を強行しようとするような場合もあれば、面会交流を理由に元妻である母親も呼び出し、母親に対して暴力をふるうような父親もいます。
このように、とても話し合いにならないような場合は、家庭裁判所に「調停事項の変更」または「子の監護に関する調停」を申し立てて、面会交流を決めた調停や裁判条項を取り消すべく話し合うことになります。
調停で、面会交流をやめるべき状況であることを父親が理解して、面会交流をやめることに合意すれば、面会交流を行わない調停が成立します。
合意しなくても面会交流の取り決めを取り消す審判が確定すれば面会交流は行わなくてよくなります。
決定から取り消しまでの流れ
- 親同士の話し合いで解決できない
- 家庭裁判所に「面会交流権」の申立てを行う
- 面会交流の具体的な内容を取り決める
- 面接が子どもに悪い影響を与えることが判明
- 家庭裁判所に「調停事項の変更」の申立てを行う
- 面会交流の権限、内容を一時停止、または取り消す
面会交流が認められにくいケース
面会交流は親の権利として認められるものですが「子の福祉」、つまり子どもの心身の健全な成長を妨げないことが絶対条件です。
したがって、面会交流を行うことがかえって子どもの成長に悪影響を与える場合には面会交流を認めないという審判や判決になることもあります。
- 子どもや監護者に暴力を振るう
そもそも暴力が原因で離婚したような場合は、離婚をした後も、基本的に面会交流権は認められません。 - 面会交流の場を利用して、子どもを奪っていこうとする
- 親権喪失事由としての”著しい不行跡”があるとき
親権者として失格とみなされる場合は、面会交流権も制限されます。(性的不品行、過度の飲酒・覚醒剤など) - 子どもが面会交流を望んでいないとき
子どもの意思を慎重に調査・判断する必要があります。 - 子どもの精神状態に配慮する必要があるとき
思春期の子どものように、別れて暮らす親と会うことによって、その精神状態が動揺する可能性が高いと考えられる場合は、面会交流が制限されることもあります。 - 子どもを引き取った親が再婚をしたとき
子どもを引き取った親が再婚し、子どもとともに円満な生活が営まれ、別れた親と会うことが子どもに動揺を与え「マイナスである」との評価がされれば、面会交流が認められない”可能性”もあります。
養育費を支払わない親の面会交流権
養育費を払わなくても面会交流を求める権利があることは変わりありません。親の義務を果たさずに権利だけを主張する態度には、道徳的問題はあると思いますが、法律的には養育費の問題と面会交流権の問題は「別の話」です。
ただ、”支払能力があるにもかかわらず”養育費を負担しないような場合は「子どもに対する愛情に疑問がある」として面会交流権が制限される可能性はあります。
事実上は面会交流権に支障が出る可能性が高いまた、面会交流を求める調停が起こされれば、事実上、調停委員から養育費の支払うよう説得されるでしょう。
法律的には養育費の不払いを直接の原因として面会交流権を制限されることはありませんが、事実上は面会交流権に支障が出てくる可能性が大きいといえるのではないでしょうか。
なお、養育費の支払いを求める制度としては履行勧告や強制執行がありますので、そちらもご検討ください。
面会交流の重要性
このページをご覧の方は、子供の権利と義務について真剣に考えている方でしょう。そんな皆様の気持ちを本当に嬉しく思います。なぜなら、離婚後の子供の将来を”真剣に”考えない親が多いと思わずにいられないからです。
多くの養育費の延滞問題が放置されているのは、私たちが子供たちの将来を真剣に考えていないことの証だと私は考えています。
離婚の際に面会交流の問題をいい加減に済ませていると「親子断絶」となる可能性があります。法律上の問題ではなく、現実問題として親子の関係が断ち切られてしまう可能性が高い、ということです。
”面会交流”という権利と義務
面会交流権は親と子の権利であると共に、子供を育てる親の”義務”でもあります。面会交流権は”子供の会う権利”としか考えられない風潮もありますが、私は”子供に会う義務でもある”といつも皆様にお伝えしています。
子供と離れて暮らし始めた頃は定期的に子供に会いに行っていたのに、時の経過と共にほとんど会いに行かなくなるケースも多々あります。
一番多いのは子供と離れて暮らしていた父親が再婚した時でしょうか。新しい家庭、新しい生活が始まるとともに、ぱったりと子供に会いに行かなくなる・・・。
今まで会いに来てくれていた父親が、とたんに来なくなったときの子供の気持ちを皆さんは一度でも考えてみたことはあったでしょうか?
面会交流の取り決めは最低限の責任
面会交流権が「親が子供に会う権利」であることを否定しませんが、基本的には「両親に会うことのできる子供の権利」と考えるべき権利です。
しかし、この権利の主体である子供自身が幼くて直接契約に携われないことや、面会交流に積極的になれない監護親の複雑な心理なども影響して、子供の面会交流の権利が守られないケースは多々見受けられます。
離婚時の面会交流の取り決めも「子供の権利をどう守るか」というより、親は「子供とどれだけ自由に会えるか?」「どうやって面会交流を諦めさせるか」という個人的な心情や都合に基づいて取り決められることがほとんどですが、このような決め方は決して子供の幸せに繋がるものではありません。
大多数の方は、面会交流の取り決めをについて契約書(離婚協議書・公正証書)を作ったり、家庭裁判所の調停に基づいて調停調書を作成すれば十分と考えがちだと思いますが、そのような書面だけで権利が保護されるとは限りません。
どれだけ完璧な契約書や調停調書があっても、役所や家庭裁判所や専門家は面会交流の世話まではしてくれません。
実際に面会交流を行う当事者が、面会交流の意味や重要性を正しく認識し、きちんと面会交流を実施していかなければ、子供の面会交流権は守られないのです。
面会交流の取り決めは、離婚する親の最低限の責任と考えて、子供のためにキチンと契約書を作成していきましょう。
面会交流に関して取り決めておくべき事柄
愛を与える人が多いほど子供は幸せに近づく
離婚する方々の多くは面会交流の具体的な取り決めができていません。具体的な取り決めをしていなくても、離婚の当事者双方が、面会交流の意義は必要性を理解し、円滑な面会交流を実施できるケースもあります。
しかし反対に、具体的な取り決めができてないためにほとんど面会交流が実現せず、親子関係の断絶に繋がるケースが多々あるのも事実です。
面会交流の実施に拒否反応を示す親の言い分は様々で「確かに面会交流を認めるのは難しい」と考えられるケースもありますが、実際は明確な取り決めができれば解決できるケースがほとんどではないでしょうか。
私は、面会交流を頑なに拒む方と話す場合「あの人は~だから面会交流は認められない」などと様々な理由を持ち出してきたとき、いつも「相手が問題ある関わりをするなら拒否すればいい・・・。いやいや、監護親なら拒否しなければいけないんですよ。」とお伝えします。
その上で「ただ、相手方が問題点を素直に反省して態度を改めると約束するなら、面会交流をする方向で検討してみませんか?相手がお子さんに悪影響を及ぼすなら会わせることはできませんが、それを改善すると約束して、実際に守られるようだったら拒否する理由はありませんよね。」と言います。
面会交流権は本来「子供が離れ離れになった親と会う権利」です。しかし実際は、その権利の主体である子供は蚊帳の外で、喧嘩をした親の気持ち優先で決められていたりします。
親は自分たちの都合で結婚し、自分たちの都合で子供を産み、自分たちの離婚するのですから、せめて親子の繋がりを維持する「子供の面会交流権」くらいは守る努力をしてあげませんか?
監護親の方に、何が何でも面会交流を認めるべきと言うわけではありません。まずは、面会交流に関する不安要素を除去する提案を相手方に要望し「認められないなら拒否」「認めるなら許す」とシンプルに考えていきましょう、ということです。
両親が離婚しても、非監護親の親が定期的に会いに来て愛情を注いでくれると、子供は「離れて暮らしていても自分は愛されている」と感じ、安心と自信を勇気を手に入れます。
反対に「捨てられた」「忘れられた」という孤独を感じると、将来に不安を感じ、自信を失い、勇気ある行動がとれなくなります。
表現の方法に上手下手はあれど、実の両親以上に純粋な愛情を注いでくれる人はそうはいません。子供の周りに愛情を注いでくれる人が多いほど・・・その愛情が大きいほど、子供が幸せになる可能性は大きくなります。
離婚する両親はいがみ合ってはいても、子供の幸せを願う思いに関しては共通するものがあるはず。ならば、面会交流を認める側は、面会交流の不安要素を取り除く提案を相手方にしていきましょう。そしてその提案を受けた非監護親は、できる限り応じる努力をしていきましょう。
ここでは、面会交流の実施に関して事前に話し合っていた方が良いと考えられる事柄をご紹介しますので、じっくり検討してください。
頻度・回数
面会交流の取り決めをする際には基本的に「一月に○日」「半年間に○日」「1年に○日」といった具合に、面会交流の頻度・回数の取り決めを行います。
面会交流が柔軟に実施できるよう「自由な面会交流を認める」と取り決めるケースも多々ありますが、このような取り決めは具体性がないので、その都度日程調整をしなければならない煩わしさから、面会交流が実施しづらくなるケースもあります。
反対に「毎月第二土曜日」と実施日を明確にしておけば、特別の事情が無い限り、お互いその日を面会交流の日として空けておくため、現実の面会交流がスムーズに実現することもあります。
面会交流の取り決めをする際、面会を行う側の親は子供との関わりをできるだけ残そうと「月に3回」などと多めの取り決めを望みますが、面会交流権は親の権利というより「子供が親に会える権利」と考えるべき権利です。
面会交流を月3回実施していれば、子供はその後「月に3回は来てくれる」と期待しますから、面会を行う側の親は子供の期待(権利)を裏切らないよう、必ず月3回の面会交流は守らなければなりません。
面会をする側の大多数は父親ですが、仕事や付き合いが忙しいと、月に3回会う機会を作るのは非常に難しいことです。取り決めた直後の1~2か月は乗り切れても、それが半年・・・1年と続くと、多くの人は取り決めた面会交流を実現が難しくなります。
一旦面会交流の契約をすれば、特別の事情が無い以上月に3回の面会交流は必ず実施しなければなりません。面会交流を行う場合は、当事者の置かれた状況を踏まえて、継続的に実現が可能な取り決めをするよう心掛けましょう。
面会交流を行う時間
面会交流の日は決まっていても、開始や終了の時刻・実施時間などが決まっていないと、その後に揉める可能性があります。
たとえば、面会交流の開始時刻や終了時刻などの時刻の認識が相違していると、面会を始めた途端に「こんなに遅くの時間帯まで連れ回さないで!」などとトラブルが発生する可能性があります。
また、面会する側の親が「丸1日会える」と思っていても、会わせる側の親が「面会は1日1時間が限度」と思っていたなら、実施時間の認識の違いで揉めるでしょう。
このようなトラブルをなくすためにも「開始・終了の時刻」「面会時間の限度」をある程度事前に協議し、決定しておいた方がよいでしょう。
宿泊の可否
面会交流の回数・時間を限定していても、実際に面会交流を実施していくと、面会する側の親と子供が宿泊を希望するケースがあります。
たとえば「土日祝日を利用して少し遠出の旅行にでも行ってみようか」という話が出たとき、帰りが遅くなることも宿泊も許されないとなれば、ちょっとした小旅行も難しくなってしまいます。
後から柔軟に宿泊の話し合いができればいいのですが、元々折り合いが悪くて離婚した夫婦だったわけですから、ちょっとした宿泊の話も前に進みづらいものです。
宿泊の話を持ち出しただけで「あなたの家に宿泊なんて絶対にもってのほか!」などと激怒されるケースもあったりしますから、ちょっとしたことでも揉める可能性があると考える方は、事前に宿泊の可否について協議しておいた方がいいでしょう。
長期休暇中の長期滞在の可否
夏休み・春休み・冬休みなどの長期休暇中などは、面会を行う側の親の受け入れ体制次第で、子供の長期滞在が可能なケースもあります。
特に、面会を行う側の親が海外のような遠方に住んでいて毎月の交流が難しい場合は「夏休みに1週間泊まりに行く」などの、一定の期間にまとめて会うような取り決めが現実的といえるでしょう。
しかし、別れた配偶者の家に子供を長期間滞在させることに、大きな不安を感じる親が大多数と考えられますので、長期休暇中に継続した面会交流を実施したいと考える場合は、離婚の際にその点をじっくり協議し、方針を取り決めておいた方がいいでしょう。
面会交流を行う場所
面会交流の取り決めをする際、面会交流を行う「場所」について、相手方の性格・行動などを踏まえて十分に検討をしていないと後から揉める可能性があります。
たとえば、ギャンブル好き・酒好きの配偶者に面会交流を認めると、面会交流の際にパチンコ店・競馬場・雀荘・居酒屋などの、子供の教育上好ましくないと考えられる場所に連れて行かれてしまうことがあります。
連れて行く側に悪気はなくても、面会を許した側の親が「絶対に許せない行為」と感じれば、その後の面会交流が一切許されなくなったりもします。
このような問題を避けるため、面会を行う側の親の性格などを踏まえ、面会交流の一環として安易に好ましくない場所に子供を連れて行く可能性がある場合は「連れて行ってはならない場所」を明確に取り決めておいた方がいいでしょう。
多少の不安があるからといって一切の面会交流を拒否するのもどうかと思いますが、不安なまま面会交流を行うのも良いことではありません。
このような場合は、不安をなくすため「当面は面会交流に○○が同伴する」とか「当面の面会交流は自宅内・喫茶店などの監護親が定めた場所で行う」などの取り決めを積極的にしていきましょう。
面会交流の実施方法を最終的に決定する者、あるいは、決定する方法
面会交流の実施に関して明確な取り決めができていないと、面会交流の日時・場所・方法などについて、監護親と非監護親の間で争いが生じることがあります。
このような場合に備え「最終的に結論を出す者」あるいは「結論を出す方法」を事前に決めておけば、必要以上に争いが大きくなるのを防ぐことができます。
たとえば、監護親と非監護親の双方が「この人が最終的に出した結論なら従うことができる」といえるような、公平かつ誠実な第三者がいるなら、その人を最終的な決定権者と定めておけば良いでしょう。
そのような第三者がいないなら、たとえば「当事者双方が公平中立と認める専門家に相談し、その専門家が良いと考える結論に従う」という方法もあるかもしれません。
離婚後に争いが発生する可能性が高いなら、離婚の際に「安価で」「迅速で」「公平な」結論を導く方法を取り決めておけば、争いが発生しても、早期に解決できる確率は格段に上がるでしょう。
電話・メール・手紙・ネットでのやりとりの可否
一般的に面会交流の取り決めは、直接会う形での交流について行いますが、その他の電話・メール・手紙・ネット通信等の方法による関わりが認められないわけではありません。
現在は一昔前と違い、パソコンやスマホなどの通信機器の発達により(年齢もよりますが)子供でも自由に通信や通話ができる時代になりました。
通話はもちろん、写真やメッセージの送受信、日記の閲覧など、工夫すれば、離れて暮らしているとは思えないほど、充実した交流を実現させることができるので、こういった便利な機器は最大限活用してきたいところです。
ただ、子供がスマホなどの通信機器にのめり込み、悪影響を及ぼす可能性もありますので、子供の性格や利用状況に関しては一定の配慮と検討が必要でしょう。
どんな便利な機器もツールも、使い方を誤れば害になります。だからといって、最初から便利なものを危険性を恐れて、有効に活用する途を閉ざしてしまうのはもったいないことです。
交流は何も一緒に遊ぶだけのことではありません。現在は、スカイプという無料の通信手段を使って遠い国の人と英会話の勉強ができる時代です。
これらの便利なツールを使えば、非監護親が子供に勉強を教えたり、勉強のやり方や計画の相談に乗ってあげることも容易にできることになります。
知識のある方なら中学校・高校の勉強にも関われるでしょうし、そうでない方でも小学校程度の勉強なら大部分のことは一緒に考えてあげられるはずです。
家庭教師を雇えばそれなりのお金がかかりますが、面会交流の一環として実親が家庭教師の役割を務めてくれるなら、一石二鳥ではないでしょうか。
一人で勉強しているとついボーっと時間を無駄にしてしまいがちですが、側で誰かが家庭教師のように監督していると、やる気のスイッチが入りやすくもなります。
愛情を与えてくれる人が多いほど子供は幸せに近づくと申し上げましたが、愛情を与えてくれる人は、有益な情報や知識を与えてくれることが多いです。
「毎週土曜日の午後18時から1時間、スカイプで一緒に漢字の勉強をして、○月○日までに漢字検定の○級に合格する」と決めて、交流を図るような方法もあります。
工夫すれば、子供を幸せに近づける様々な関わり方があると思いますので、こういった使い方も一度検討してみてはいかがでしょうか。
プレゼントの可否
非監護親は「(誕生日・クリスマス・子供の日などの)特別な日にプレゼントをあげるくらいは問題ない」と安易に考えている方が多いようですが、受け取った監護親の中には「勝手にプレゼント贈るのはやめてください!」と憤慨する人もいることを覚えておきましょう。
たとえば、子供にゲームを買い与えない教育方針の家庭にゲームを贈るようなことをすれば、教育の邪魔をすることになってしまいます。
「チョットしたプレゼントくらいいいじゃないか」という非監護親の思いも分からないではありませんが、子供の教育方針を決めるのは監護親です。自分の考えを言うのは構いませんが、特別の事情が無い限り、非監護親の最終的な決定は尊重し、従うよう心掛けましょう。
反対に監護親は、離婚しなければ非監護親も自分と同列で子供の教育方針を決定できる立場であった、そして非監護親の考え方も尊重されるべきものであることを認めた上で、子供にとって良い結論を導くようにしましょう。
面会交流の実施する際の送迎や引渡の手順
面会交流の送迎は、面会を行う非監護親が行うのが一般的です。しかし、遠方に住む非監護親などからは、面会交流のために多くの金銭的負担(交通費・宿泊費等)、手間、時間がかかることから不満の声が上がることがあります。
残念ながら面会交流に伴う費用の一部を監護親に求めるのは難しいと言わざるを得ません。ただ、面会交流を子供の権利という考え方を前提とすれば、監護親にも面会交流に一定の協力が求められることは当然のことです。
現実的に、面会交流の費用は非監護親が負うべきものだとしても、展開次第では監護親も逆の立場になっていたわけですから「もし自分が相手方の立場だったら」という視点に立ち、非監護親の面会交流の実現にできる限り協力していきましょう。
学校行事(参観日・運動会等)へ参加の可否
面会交流の一環として、参観日・運動会などの学校行事に非監護親の参加を認めるかどうか、は事前によく話し合った上で決めておいた方がいいでしょう。
監護親が学校行事に非監護親の参加を認めるかどうかを考えるとき「子供と関わる権利を与えるかどうか」という視点だと、元々折り合いが悪くて離婚した相手ですから「あんな人に子供の成長を見せる必要は無い」と考えてしまいがちです。
しかし「非監護親の学校行事への参加は子供の健全な育成に大きく貢献する」という、子供にとってのメリットや必要性の観点から両親が真剣に検討した場合は、おそらく、非監護親の学校行事への参加を前向きに検討できると思います。
学校行事への参加も、通常の面会交流同様の親子の関わりです。運動会や参観日に非監護親が来ていたら、子供は「自分は一人じゃない」「見守られている」と安心し、積極的に他者と交流できる心が育ちやすくなります。
ですから両親は、非監護親の学校行事への参加が子供の健全な精神発達に良い影響を及ぼすことを確認した上で、積極的に学校行事に参加する方向で取り決めをしていきましょう。
なお、非監護親が学校行事に積極的に参加する方針が決まった場合は、監護親から非監護親への連絡をどのような形で行うかもキチンと決めておきましょう。
監護親が学校行事の詳細を知った日から何日以内に、どういう方法(手紙・メール・ファックス等)で非監護親に連絡するのか、連絡を受けた非監護親は監護親に対し、何日以内に出欠の回答をするか、といった連絡手段も事前に取り決めておけば、学校行事への参加もスムーズにできるはずです。
子どもの意思の確認方法
面会交流を実施するにあたり、監護親が「子どもが会いたくないと言っている」と言って面会交流を拒否することがよくあります。
しかし、非監護親は子供の発言を直接確認していないので「そんなことを言うはずがない!」などと、子供の発言を巡って争いになることが多々あります。
真相は「監護親が嘘を言っているケース」「本当に会いたくないと言っているケース」「発言は本当だが真意ではないケース」など様々ですが、少なくとも子供の真意を確認する必要性があることは確かです。
このようなとき、面会交流の実施を求める調停・審判の手続きによって、家庭裁判所の調停委員・調査官に子供の意思を確認と面会交流の調整をしてもらうことができます。
しかし残念ながら、家庭裁判所は面会交流の実現にそれほど積極的ではなく、とある調査では半数以上が「調停委員や調査官の発言や態度は不適切」と感じていることが明らかになりました。
更に不適切と指摘した人の9割が、調停委員や調査官について「他人事で無責任な発言が多い」と回答していますので、残念ながら家庭裁判所の手続きも期待薄と言わざるを得ません。
このような現実を踏まえ、面会交流の取り決めをする際、子供が会いたくないと言った時はどんな方法で子供の意思を確認するか事前に決めておくのも一つの手です。
たとえば、監護親と非監護親が共に、公平かつ妥当な判断ができると認める第三者がいるなら、そのような人に子供の意思を確認してもらうといいでしょう。
いずれにせよ、子供が親と会いたくないと言う精神状態は決して健全とは言えません。このような時は「お前のせいだ!」「あなたのせいよ!」」などと相手を非難するのではなく、子供の気持ちの理解と改善に協力していくべきでしょう。
非監護親の親族との面会交流の可否
面会交流を実施するにあたり、非監護親が子供を自分の親族に会わせることに監護親が拒否反応を示すケースはしばしば見受けられます。
特に、離婚するまでに非監護親の親族と監護親の間で親族関係のトラブルがあったケースでは、監護親が非監護親の親族と子供の面会交流を頑なに拒むことがほとんどです。
「あんなひどい人の家に子供を連れて行かせるわけにはいかない!」と、監護親が感情的な反応を示す場合は、残念ですが、面会交流を実施が子供に悪影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。
感情が抑えきれない監護親は、子供に対して日常的に非監護親の親族の非難にあたる言葉を発していることが多く、それを聞き続けてきた子供は洗脳にも等しい形で「あの人は悪い人だ」と思い込んでしまうところがあります。
仮に、子供が親族に悪感情を持たなかったとしても、監護親が親族を激しく嫌っていることを知っていれば「親族と仲良くしたら親が傷つく」と思い、親族と会うことに強い罪悪感を感じてしまう可能性があります。
本来、面会交流の是非を検討する上で最も重要なのは子供の気持ちです。しかし、子供の気持ちを聞く以前にその監護者である親の精神面が乱れていれば、子供もその影響を受けて不安定になります。
問題が非監護親の不適切な関わり方にあるのか、それとも監護親の受け取り方にあるのか、その真相は様々だと思いますが
、当事者やその親族らが本当に子供のために良い結論を導き出そうとするなら、まずは結論を出す両親の精神面を安定させることが解決への第一歩となるでしょう。
その上で、親族の関わり方に問題がありそうなら、その問題の改善に関する条件を親族に突き付け、素直に改善する旨の意思を表明するなら、徐々に面会交流の幅を広げていきましょう。
親族の面会交流権は法的な権利とは認められていませんが、子供が適切な形で多くの親族と交流することは、子供の健全な成長に大きなプラスの効果をもたらします。
離婚は、当事者の精神に大きなダメージを与えますが、それによって子供の成長に悪影響を及ぼしてはなりません。監護親としては面会交流の実施に複雑な思いがつきまといますが、子供のために「非監護親の親族が嫌い」という個人的な感情を一旦捨て去りましょう。
親族が過去の問題ある言動を謝罪し、積極的に改善しようとするなら、親族は子供の幸せに協力してくれる味方です。「子供を見守ってくれる味方が多いほど子供は幸せに近づく」と考えられるなら、真に子供の利益に繋がる面会交流が実現できると思いますので、特別の事情が無い限り、親族との面会交流も積極的に行う姿勢を持つようにしましょう。
一度取り決めた面会交流の内容は変更できる?
面接交渉の方法を決めて実行した結果、子どもが面接交渉の日が近づくと体調をおかしくしたり、会うのを泣いて嫌がるようになった場合にも、決めたとおりに面接交渉させなければならないのでしょうか。
この場合には、子の福祉の観点から、まず相手方と話し合って、しばらく面接交渉をやめて子どもの様子をみるなど、一度決めた面接交渉の内容を合意で変更することを交渉すべきです。
話し合いをしようとしても、相手方が「調停や裁判で決まった権利だから決めたとおりにしろ!」と強要したり、「子どものが嫌がっているなんて嘘だ!」と疑ったり、子どもに二度と会えなくなるのではないかとの心配から、どうしても面接交渉を強行しようとするような場合もあれば、面接交渉を理由に元妻である母親も呼び出し、母親に対して暴力をふるうような父親もいます。
このように、とても話し合いにならないような場合は、家庭裁判所に「調停事項の変更」または「子の監護に関する調停」を申し立てて、面接交渉を決めた調停や裁判条項を取り消すべく話し合うことになります。
調停で、面接交渉をやめるべき状況であることを父親が理解して、面接交渉をやめることに合意すれば、面接交渉を行わない調停が成立します。合意しなくても面接交渉の取り決めを取り消す審判が確定すれば面接交渉は行わなくてよくなります。
子の引き渡しを求める法的手段
離婚の話し合いに際して、別居中の父母のどちらが親権者になるかで争っており、どちらか一方が子どもを連れ去った場合、子どもの引き渡しを求める法的手段としては次の三つがあります。
家事審判または調停
「子の監護に関する処分」または「夫婦の協力扶助に関する処分」の申立てのことで、離婚していない夫婦の一方が引渡を求める場合は、まずこの調停から始めるのが通常です。この請求は家庭裁判所ではなく、地方裁判所に申し立てる「訴訟」となります。子どもが連れ去られて緊急を要する場合、すぐに弁護士に相談しましょう。
人事訴訟
離婚訴訟を行っている場合に合わせて、その裁判所に「子どもの監護等の措置」を申し立てる。
人身保護請求
法律上、正当な手続きによらないで拘束されている者の救済を求める訴訟です。請求者には制限がありませんので、他の訴訟がない場合でも単独で申し立をすることができます。ただし、「拘束の違法性が顕著(明らか)であること」が必要になりま
審判・訴訟の前に子供が連れ去られる虞がある場合
審判前の保全処分
審判、訴訟の前に相手が子どもを連れ去ってしまう可能性がある場合、子どもの安全を守るため、「審判前の保全処分」をして、子を連れ去った親に対しての子の引渡しを要求することもできます。
監護者指定の審判申立てと合わせて子の引き渡しを求め、その審判の保全処分として別個に子の引渡しを申立てればよいのです。ただ、仮処分命令を出すには、両親のいずれかを監護者とすべきか、子どもの福祉・利益の観点から十分調査されることになります。
人事訴訟法に基づく「子の監護者に関する仮処分」は、家庭裁判所に申立て、民事保全法の「仮の地位を定める仮処分」の規定を準用して判断されます。
直接強制と間接強制
審判や訴訟で勝って「引き渡せ」という命令が出ても、他方の親が、実際の引渡しをしてくれないこともあります。このような場合には、強制執行を申し立てることになりますが、強制執行の方法としては、次のようなものになります。
直接強制
裁判所の執行官が子どものところに行き、子どもを取り上げて連れてくる方法
間接強制
一定期限までの引き渡しを命じ、期限までに引き渡さなければ引き渡すまで「一定額の金額の支払い」を命じるもの。
1の方法によれば現実に引渡しがされますが、この方法は「子どもを物と同様に扱うもの」で意思や人格を持っている子どもを無視するものと考えられています。子どもがまだ意思能力のない乳幼児で、不当に拉致誘拐されている場合のように、一般道徳的にもやむを得ない緊急性の高い場合以外は、2の方法により心理的強制を与えて引き渡させるのが通常です。